環境調査

揮発性有機化合物により汚染した土壌及び地下水の浄化処理現状

揮発性有機化合物(VOC:TCE、PCE、cis-1,2-DCE等)により汚染された土壌及び地下水を浄化するには汚染土砂入れ替え工法が最も効果的ですが、工場操業中では施工不可能であり、また搬出汚染土砂の処理費を含めると膨大な費用が掛かります。

そこで汚染土壌及び地下水の浄化と汚染地下水の敷地域外流出防止を目的として揚水曝気工法が一般には採用されています。本工法である程度まで汚染濃度を下げることが可能ですが、土壌に吸着している汚染物質を基準値以下まで洗い出すのは容易ではなく、完全浄化には相当な時間を要します。

このため揚水曝気を何十年も継続しなければならない場合が少なくありません。

バイオレメディエーション・バイオスティミレーションとは

バイオレメディエーション技術は、微生物を利用して土壌及び地下水の汚染物質を直接分解する方法であり、

などが期待される新しい環境修復技術として注目されています。図-1に自然状態でのTCEの分解過程を示します。

そしてバイオスティミレーションとはこの地中に存在する土着の微生物に栄養分を混ぜた地下水を土粒子に接触させることにより 活性化させ、VOCを分解し塩素を含まない無害なエチレン・エタンに還元脱塩素化を行う方法です。 地質、水質等適した地盤であれば2~12ヶ月で汚染源の液溜まり(DNAPL)も浄化でき、短工期・低コストなのが特徴です。

微生物活性化(Bioremediation)による揮発性有機化合物浄化・修復工法

汚染された土壌・地下水を浄化するには様々な方法があり、サイトの諸特性によりベストな工法を選択することになります。 浄化先進国アメリカの事例から見れば、揮発性有機化合物(VOC)に 限れば最も費用対効果が優れている浄化工法はバイオレメディエーション(バイオスティミュレーション)と言えます。

EDC注入工法の概要

「EDC」は米国の環境修復市場で豊富な実績を有するGZA社と エコサイクル株式会社との共同開発により 開発された食品材料から作られた微生物の栄養源です。 地下水を揚水し微生物の活性化に必要なEDC製品を溶解し、このEDC溶液を注入井戸から自然注入します。 またサイトの土質要件等を考慮しジオプローブ等による加圧注入によりEDC溶液を汚染土砂に注入することも可能です。 アメリカにおけるバイオスティミュレーション(水素供与剤を使用する)適応技術をインターネットで 検索すると汚染地下水を入れ替えるサーキュレーションが効率性を考えた場合、重要課題であると判断されます。 当EDC注入工法も揚水した汚染地下水に水素供与剤を溶解し、 注入井戸から地中に戻す所謂サーキュレーションを行い修復期間の短期化を実現します。 この場合、揚水井と曝気装置により浄化しつつ水道水等を別途調達しそれに水素供与剤を溶解させ注入することも当然できますが、 揚水曝気しクリーンアップした地下水を流す下水道料金と水素供与剤を溶解する水道料金が二重に必要となりランニングコストが 大きな負担となります。【図-2参照】

図-2 注入工法模式図

表-1 浄化工法比較表:対象土量3万m3(1万m2×層厚3m)の汚染サイトの場合

工 法 名 揚水曝気工法 EDC注入工法
手  法 物理的手法 微生物を活性化する手法
必要設備 揚水井戸:5~10本
爆気装置:1~3セット
排ガス処理装置:1~3セット
注入井戸:5~10本
揚水井戸:5~10本
EDC注入時地下水とのミキシング装置
修復期間 DNAPLが存在しない場合は3年~10年
DNAPLが存在する場合は10年以上
DNAPLが存在しても
2ヶ月~1年
維持管理費 揚水費用+フィルター材の交換
揚水地下水排水のための下水道料金
(例:名古屋市250円/m3)
揚水費用
EDC注入時に地下水とのミキシング装置の運転費用
修復費用 井戸+曝気装置:2~3億円
維持管理費:2000~4000万/年
多くのサイトで採用されている土砂置き換え工法では10億円以上 土砂置き換え工法の1/3以下

微生物活性化(Bioremediation)による揮発性有機化合物浄化・修復例

「土質・水文地質のプロとバイオのプロのベストマッチング」こそがバイオレメディエーションを成功させる重要課題であると 認識しています。例えばEDC製造元である「エコサイクル株式会社」は僅か半年で3例の修復に成功しました。 下図は3例中最も汚染濃度が高いサイトの修復経過を示したものです。このサイトは某自治体の参画の下、 実証されたものです。

参考資料

EDCについて<エコサイクル株式会社>